メモリーエラー

夢と現実 1/8



頭に銃口をあて、ふっと思い出す。



ああ、エミリ。

エミリは“こっち”の住人なのか…?

彼女の笑顔が色淡く浮かぶ。
赤く染まった頬、艶やかな髪。可愛い我が儘、無償の優しさ。

軍でシミュレーションをした時から疑似世界なら、彼女も幻だったのか。
彼女は単なる俺の妄想の幻影なのか。



…俺達一緒の世界が良かったな。

でも俺には帰るべき場所がある。

会いたければまた眠ればいいんだ。そしてまたここに来ればいいんだ。

だから今はさよならだよ。




目をつむり、ためらいなく引き金を引く。


鋭く脳髄に響く発砲音。

衝撃に頭が激しく揺さぶられた。




……。



闇。

闇が目を覆い尽くしている。


…覚めない。

一向にに目が覚めない。


そんな…そんな。


死んでいないだなんて!
頭を撃ったのに…!



目を開けるとまだ遠い天井が見える。


激痛に涙目になりながら、もう二、三度ガツンガツンと引き金を撃った。

やけくそだった。


口から血反吐を吐き、地だまりに頭が浸るのが分かる。

死にそうなくらいの痛み。



でも、死ねない。



「なんで!!」



弾丸は頭蓋骨を貫通し、脳に突き進んでいるはず…それなのに意識がある……

まさか。

馬鹿な、嘘だ、信じられるか。



この頭に脳みそがなく、一枚の電子チップしかないのなら、銃弾を埋め込んでも無駄である。

死ねないこと、それはすなわち俺の中身はロボットであり、それが現実だと意味した。




「あああっああ!」



いや…いや違う、これは嘘の世界だ!

何故なら頭にチップが入っており、何度拳銃で撃っても死なない人間など存在するはずがない!

だからこれはシュミレーション、嘘の世界だ!



そうだ、頭じゃなくて心臓ならどうか。

心臓撃ったら血が回らなくなり死ねるだろ。



…あ。

駄目だ……!

体だけ死んでも、頭がチップなのだから精神が死ねない!




どういうことだ、俺は死ねない。

どうやっても死ねないじゃないか。

死ねないということは、現実世界に戻れない。




「ああ…」



全身の力がなくなり、手から拳銃が滑り落ちた。

痛みと大量の出血で俺は身動きがとれなくなった。








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