メモリーエラー

少女と博士 1/12






「レオ…」



優しい声がどこからか聞こえる。

ふんわりした大人の女性の声。




「レオ…」



…!


「もしかして、母さん…?」




声の主を探して辺りを見回す。

真っ白で何もない世界に、ぽっかりと丸い穴が空いていた。

その穴は直径2メートル程度の巨大なものだ。

俺は中を恐る恐る覗いてみた。





「レオ…」


「母さん!」



俺の母親が穴の中からこちらを悲しげに見つめている。

穴は真っ暗で底が全く見えないが、すぐ手を伸ばせば届きそうなくらいに、彼女は見えた。




「母さんは本当に母さんなのか!?」



激しく高鳴る心臓の音を隠しきれない。

しかし彼女はそんな俺の問が聞こえないのか、ただ悲しげな顔でこちらを見つめていた。




「今そっちに行くよ!」



俺は穴に足を踏み入れた。

それを理解したのか、母は嬉しそうに下で手を広げ、受け止めようとしている。



両足を入れて入ると、ぐん、と下に引き寄せられるように体が落ちた。





「母さ…」



母の腕は俺をすり抜けた。

いや、母の方が実態がないみたいにすり抜けた。



そんな…


真っ暗の闇の中、更に下へ下へと加速して落ちていく。

どうして…!


上を見上げる。





「…っ!?」



俺を見下ろして、ニタ、と不気味に笑う母の顔があった。




「なんでだ!!」





『お前は人殺しの子、人を殺すために生まれてきたんだ。

戦いたいだろ?
人を殺めたいだろ?

自分の生を戦いで実感したいだろ?

そうだ、これは宿命。
私は人殺しをさせるためにお前を生んだ。
これは変えられないんだ。

人はみんな生まれもった宿命を背負って、他人が敷いたレールの上を、さも自分が作った道だと誇りながら歩くのさ。

お前は強い。

人よりも並外れた運動能力、精神力を持つ。
強さは誇っていいぞ、さすが私の子なのだから。

怖くなんかないさ。
何も感じないだろ?
麻痺してるんだろ?

素直になってごらん。

地面に落ちたら戦争真っ只中だ。

そこで力を私に見せてごらんよ。』






俺は…




「人なんか殺さない!!」





ドン、



小さくなっていく母親を見ながら、俺は地面に叩きつけられた。







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