メモリーエラー

目覚め 1/10






「夕日が綺麗だ」




そうやって空を見上げていると、突然俺の視界はまばゆい光で覆われた。

思わず目をつむる。

トンネルを抜けたときに目が順応しないまぶしさだとか、そんなものじゃない。


焼け付くような痛いオレンジの光。

一瞬何だか解らなかった。



そして耳が割れるような爆発音。

ドンでもドカンでもない地球にひびでも入ったかのような巨大な音が、俺の聴覚を支配した。




熱い。
焼け焦げた臭いが鼻をつく。

そう感じた時にはもう意識を失いかけていた。


今まで何をしていて俺は何者であるかさえ、忘れていた。

一体何が起こったんだ。





こんなにも摩訶不思議な現象が起こったのにも関わらず、人々の声は全く聞こえない。

その理由が目を開けてようやく分かった気がした。



ビルなどの高層建築物が形を残しつつ、砂塵をまとって崩れていくのがまず目に映る。


視界が狭く、前方しかはっきりと見えない。

俺は顔を振った。


窓は凍ったバラの花びらのように、濃いオレンジ色の風に乗る。

その音はいつしか行ったチェルノブイリに吹く風に似ている。



ビルだけじゃない、窓だけじゃない。


ビルより手前に灰色の滑り台とブランコがある。
ああそうだ、ここは公園だ。

子供が誰一人いないことと、遊具が使えないことを除けば確かに公園だ。


草木は消し炭になっている。
電線から火花が散っている。
ありとあらゆる建物、ありとあらゆる生命が消えている。

後ろを振り返ると廃墟の白い建物が見えた。


ああ、分かったぞ。

ここは首都、ワシントンだ。

ホワイトハウスが破壊されているのと、首都なのに人が俺しかいないのを除けば確かに、ワシントンだ。




口、鼻、目の中に砂埃が入って息苦しく、いてもたってもいられなくなってきた。


手で口を押さえようとしたら、俺は急に後ろへ仰向けに倒れ込んだ。

精神的なものじゃない。
体が熱くて熱くて、でも背にしたアスファルトはもっと熱かった。



喉が乾いた。

横たわったまま自分の腕を見ると真っ黒に焦げていた。

動けない。

見渡すと全身が黒くただれていた。
カサカサで血が蒸発してしまったみたいだ。

試しに両手で肘の関節を曲げてみると、肘からミシミシと皮膚が裂けた。

しかし不思議とまだ意識はある。



ふと遠くに視線を移す。


赤い空。

空一面燃えるように染まっていた。

それはまるで地獄のような、神の怒りにでも触れたような、今まで見たこともないおぞましいものだった。





「夕日じゃ…ない」



異常な空の輝きとマッシュルームみたいな曇を見て、俺の視界は丁度閉ざされた。




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