ERIKA

名簿 1/1






人の名前が羅列された紙。




「えーっと3422番、死亡。3423番、死亡。3424番…死亡。んーなんだこれ。もうみんな死んだってことでいいんじゃないですかね」




その頃収容所内では下士官の"所長"が仕事をしていました。

死亡報告書と、手渡された大量の囚人名簿が彼の机に山積みになっています。

が、そのほとんどは既に毒ガス、絞首刑、銃殺、伝染病、過労、その他親衛隊の余興などで死亡した者の名前であり、単純に備考欄に死亡と書き込むだけの作業となっているようです。




「って言うか、んなもん一々書いてたらお前の手が死亡だろ。むしろでっかいチョンチョンでも書いとけって、どうせ死ぬんだから」



親衛隊少尉の仲間が肩を叩きます。


所長はふーっとため息をつくと一旦手を休めて、イスに深く寄りかかりました。




「…手は痛くなるけどまあ、死体処理なんかよりは幾分マシですから…今日は真面目にやりますよ〜」



さわやかに言いました。



「んなもんやってたのか?…さっさと昇進しろって。アレは外人のやることだぞ」


「…ははっ臭いだけでもゲボ吐けるんだって実感しますよ、鍵持ってるから行ってみます?」



「あーいや遠慮しとくよ、一生会計でいい。幸せだもの」




冗談でも笑えません。



ここの収容所では死んだ囚人達は皆、火葬場で焼くことになっていました。

死体処理はそこまで死体を運んで焼く仕事です。

ところがあまりにも死亡人数が多すぎて焼却が追いつかず、いくつかが放置されて虫がわくこともありました。


加えて死体処理の仕事に関わった親衛隊たちが、だいたいなんらかの精神病にかかっていきましたので、少しでもドイツ人の負担を減らすために外人が起用されることが多いらしいのです。





それに比べてこっちの仕事は楽。
第一、臭くないし。

今日はラッキーだな。

きっと戦争が始まったからだな。
戦争が僕に運気をくれたんだ。


…。


…関係ないか。


所長は死亡記入を再び再開しようと、机に向かいました。








「…あれ」






この女の子…



「大佐が連れてたワンピースのユダヤ人だ」



名簿にはあの少女の顔写真がはっきりと写っていました。



そうか、あの子収容所の子だったのかー。


「えっと3425番、性別女、名前…」







名前…







名前…



なし。




…なし!?



いや名前なしって、…!?



備考欄には
「名前を聞きそびれた」
とあります。



な、ななななんだそれ…!?

…そんなことあっていいのかよ!


所長は吹き出しそうになりました。



普通こういうのは戸籍登録を確認したりするだろ!?




そう言えば、何故収容所にいたユダヤ人なのにワンピースだったのだろう…?

あれれれ、色々おかしいぞこいつ。





「ねぇ、この名簿を書いたのはローリッツ大佐ですよね…」


念を押すように仲間に訪ねました。



「分かってるだろ。ったく大佐が始末するって言ってたんだから、死亡って書いとけよ、めんどくさい」



「うーん…だけどなんだかなぁ。…ま、まあ、いいか」






所長は彼女の備考欄に、大きく"死亡"と書きました。







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